昨日は『朝日新聞』さんの「天声人語」を引きましたが、本日は最近、地方紙二紙に載ったコラム。いずれも光太郎に少しだけ言及して下さっています。
まずは長野県松本平地区で発行されている『市民タイムス』さん。
みすず野 8月11日
現在の松本市出身の歌人・窪田空穂が、山 岳紀行『日本アルプスへ』を残し、それが黎明期の北アルプスを知る貴重な資料の一つであることは、あまり知られていない。先日、松本市立博物館に山の図書 2000冊を提供した百瀬武さん(松本市)の1冊に、この本があった◆空穂は大正2(1913)年8月、37歳のとき初めて上高地に入り、一軒宿の清水屋 で高村光太郎らと過ごし、あのウェストン夫妻と偶然同宿した。夜、空穂たちは話が弾み、大声で笑い合っていると、「もしもし!」という、妙ななまりのある 声が廊下から響き、「妻が病気で寝ているので、静かにしてもらえないか」と外国人が言ってきた◆山岳通の友人の話から、外国人はウェストンだと知ったとい う。山行は『日本アルプスへ』『日本アルプス縦走期』にまとめられ、往時の登山が、林道や山小屋の整備が進んだ現代とは、比較にならない苦労を強いられた 様子がわかる◆国民の祝日「山の日」が施行されるまでには、長い歳月を要した。あらためて郷土の美しき山を眺め、登り、親しみ、その多大な恵みに感謝した い。先人たちの足跡に思いを至らせたい。
大正2年(1913)7月から10月にかけ、光太郎は上高地の
清水屋に滞在。9月には智恵子も来て、一緒に画を描いたそうです。光太郎の絵はこの年10月に神田三崎町のヴヰナス倶楽部で開かれた生活社主催の展覧会に出品されました。
二人で下山したのが10月8日。二人が結婚披露宴を行ったのは翌大正3年(1914)ですので、婚前旅行です。やるなぁ、という感じですね。光太郎と智恵子、上高地で結婚の約束を結んだとのことです。
ウェストンは、あとから合流した智恵子を見て光太郎に、「妹か、夫人か」と問い、光太郎が「友人だ」と答えると苦笑したといいます。
そのあたり、以前のこのブログで何度か書いております。ご覧下さい。
続いて仙台に本社を置く『河北新報』さん。
河北春秋 8月14日
猛暑の夏。涼を求めて訪れるとしたら、木陰と渓流、そして神秘の湖が思い浮かぶ。明治の文人、大町桂月が「風光の衆美を一つに集めたる、天下有数の勝地也」(『奥羽一周記』)と絶賛した十和田湖と奥入瀬渓流は、リフレッシュには最適の地だ▼1936(昭和11)年に十和田八甲田地域として国立公園に指定され、今年は80周年。桂月が雑誌『太陽』に紀行文を発表するまでは、地元の人しか知らないような湖だったというが、開発が進み、一大観光地となった▼しかし、この10年ほどで様子は一変。湖畔には廃屋となったホテルや、閉鎖された土産物屋が立ち並ぶ。目の前の湖の美しさは変わらないが、劣化の目立つ建物は、零落感を漂わせながら景観を損なう▼それでも、シーズン中は早朝から湖畔を散策する人が絶えない。「乙女の像」背後の林に荘厳なたたずまいを見せる十和田神社は、近年パワースポットとして注目を集め、遠来の客を呼び寄せる。奥入瀬にはコケ好きな「苔(こけ)ガール」や、香港など海外からの観光客も足を運ぶ▼国が訪日客誘致のモデル事業を行う国立公園の一つに選ばれたのは、久しぶりの朗報だ。桂月が「山は富士、湖は十和田」ともたたえた景勝。豊かな自然に親しむエコリゾートを目指し、節目の再出発を。
最後の「訪日客誘致のモデル事業」云々、同じ『河北新報』さんの先月の記事から。
ブランド観光地 十和田八幡平など8国立公園
環境省は25日、国立公園への訪日客誘致のため、受け入れ態勢を重点整備し、ブランド観光地として世界にPRするモデル事業を、十和田八幡平(青森、岩手、秋田)や日光(福島、栃木、群馬)など8カ所で実施することを決めた。専門ガイドの育成や宿泊施設の機能を強化。大型商業施設を整備できるよう規制緩和も検討する。
8カ所はこのほか、阿寒(北海道)、伊勢志摩(三重)、大山隠岐(鳥取、島根、岡山)、阿蘇くじゅう(熊本、大分)、霧島錦江湾(宮崎、鹿児島)、慶良間諸島(沖縄)。
全国に32ある国立公園のうち、16カ所の地元道県から選定の要望が出ていた。世界遺産や温泉といった外国人を引きつける資源があることや、景観向上の取り組みなどを基準に8カ所を選んだ。
熊本地震の被災地にある阿蘇くじゅうは、災害復興のモデルに位置付け、重点支援する。
8カ所は日本の「ナショナルパーク」として、情報発信するため英語の統一ブランドも検討。地元自治体などは地域協議会を設置し、自然や伝統文化を生かしたツアーの開発に取り組む。モデル事業の成功例は、他の国立公園にも広げる。
十和田八幡平は総面積8万5551ヘクタール。十和田湖や奥入瀬渓流などを抱える青森県の三村申吾知事は「宮城、北海道などとも広く連携し、外国人客をさらに取り込みたい」と歓迎。小山田久十和田市長は「東日本大震災で落ち込んだ観光客を取り戻し、十和田湖も活性化するだろう」と話した。
国立公園のブランド化は、2020年時点で訪日客を年間4千万人とする政府の新たな観光戦略の一環。国立公園を訪れた外国人は15年に430万人だったが、1千万人に増やす目標だ。
8カ所はこのほか、阿寒(北海道)、伊勢志摩(三重)、大山隠岐(鳥取、島根、岡山)、阿蘇くじゅう(熊本、大分)、霧島錦江湾(宮崎、鹿児島)、慶良間諸島(沖縄)。
全国に32ある国立公園のうち、16カ所の地元道県から選定の要望が出ていた。世界遺産や温泉といった外国人を引きつける資源があることや、景観向上の取り組みなどを基準に8カ所を選んだ。
熊本地震の被災地にある阿蘇くじゅうは、災害復興のモデルに位置付け、重点支援する。
8カ所は日本の「ナショナルパーク」として、情報発信するため英語の統一ブランドも検討。地元自治体などは地域協議会を設置し、自然や伝統文化を生かしたツアーの開発に取り組む。モデル事業の成功例は、他の国立公園にも広げる。
十和田八幡平は総面積8万5551ヘクタール。十和田湖や奥入瀬渓流などを抱える青森県の三村申吾知事は「宮城、北海道などとも広く連携し、外国人客をさらに取り込みたい」と歓迎。小山田久十和田市長は「東日本大震災で落ち込んだ観光客を取り戻し、十和田湖も活性化するだろう」と話した。
国立公園のブランド化は、2020年時点で訪日客を年間4千万人とする政府の新たな観光戦略の一環。国立公園を訪れた外国人は15年に430万人だったが、1千万人に増やす目標だ。
外国の方の誘致も大切ですが、まずは国内の皆さん。上高地なども含め、この国の美しさを再発見していただきたいものです。
【折々の歌と句・光太郎】
ひつそりと翼をさめてゐる蝉のつばさ手ずれてやや光たり
大正13年(1924) 光太郎42歳