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第7回声楽アンサンブルコンテスト全国大会-感動の歌声 響け、ほんとうの空に。-

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福島の原発被害からの復興支援の合い言葉として、「智恵子抄」中の詩「あどけない話」に使われている「ほんとの空」の語がよく使われています。または「う」が入って「ほんとうの空」。
 
 
3/20(木)から昨日までの4日間、福島市音楽堂で、第7回声楽アンサンブルコンテスト全国大会が開催されました。こちらもサブタイトルが「-感動の歌声 響け、ほんとうの空に。-」。
 
イメージ 1
 
「アンサンブル」ですので、基本的に少人数での演奏。要項によれば2名以上16名以下での演奏という規定でした。
 
福島県は「合唱王国」と言われ、各種の全国コンクールで上位入賞を果たす団体が多いことで有名です。智恵子の母校、福島高等女学校の後身・県立橘高校合唱団も全国大会上位常連です。平成21年(2009)から23年(2011)には、委嘱作品で、光太郎の詩に作曲家の鈴木輝昭氏が曲を付けた「女声合唱とピアノのための 組曲 智恵子抄」から自由曲を選び、全国大会上位入賞を果たしています。
 
その福島県が主催して、毎年この時期に行われているのが「声楽アンサンブルコンテスト」。第1回は平成20年(2008)でした。
 
平成23年(2011)は、東日本大震災直後ということあり、中止。翌年からサブタイトルに「-感動の歌声 響け、ほんとうの空に。-」が使われるようになりました。福島の皆さんの切実な思いが込められているように感じられます。
 
当方、地元・千葉で混声合唱をやっているのですが、実はこうした経緯、最近まで知りませんでした。汗顔の至りです。
 
さて、昨日までの「第7回声楽アンサンブルコンテスト」。高等学校部門、中学校部門、一般部門が1日ずつ開催され、最終日には各部門上位団体による本選という流れでした。結果、上位5位までに、福島からの出場団体が4組入っています。ホームタウンデシジョンというわけではないはず。「合唱王国」の面目躍如、そして「ほんとの空」を求める切実な思いの表れなのでしょう。
 
一日も早く「ほんとの空」が戻ることを願います。
 
【今日は何の日・光太郎 補遺】 3月24日
大正14年(1925)の今日、詩「傷をなめる獅子」を書きました。
 
翌月の雑誌『抒情詩』に発表され、さらに光太郎没後の昭和37年(1962)、草野心平が鉄筆を執って作ったガリ版刷り詩集『猛獣篇』に収められました。
 
イメージ 2
  傷をなめる獅子
 
獅子は傷をなめてゐる。
どこかしらない
ぼうぼうたる
宇宙の底に露出して、
ぎらぎら、ぎらぎら、ぎらぎら、
遠近も無い丹砂(たんしや)の海の片隅、
つんぼのやうな酷熱の
寂寥の空気にまもられ、
子午線下の砦(とりで)、
とつこつたる岩角の上にどさりとねて、
獅子は傷をなめてゐる。
 
そのたてがみはヤアヱのびん髪、
巨大な額は無数の紋章、
速力そのものの四肢胴体を今は休めて、イメージ 3
静かなリトムに繰返し、繰返し、
美しくも逞しい左の肩をなめてゐる。
 
獅子はもう忘れてゐる、イメージ 4
人間の執念ぶかい邪智の深さを。
あの極楽鳥のむれ遊ぶ泉のほとり
神の領たる常緑のオアシスに、
水の誘惑を神から盗んで、
きたならしくもそつと仕かけた
卑怯な、黒い、鋼鉄のわなを。
 
肩にくひこんだ金属の歯を
肉ごともぎりすてた獅子はかう然とした。
憤怒と、侮蔑と、憫笑と、自尊とを含んだ
ただ一こゑの叫は平和な椰子の林を震撼させた。
さうして獅子は百里を走った。
 
今はただたのしく傷をなめてゐる。
どこかしらない
ぼうぼうたる
つんぼのやうな孤独の中、
道にはぐれても絶えて懸念の無い
やさしい牝獅子の帰りを待ちながら、
自由と闊歩との外何も知らない、
勇気と潔白との外何も持たない、
未来と光との外何も見ない、
いつでも新らしい、いつでもうぶな魂を
寂寥の空気に時折訪れる
目もはるかな宇宙の薫風にふきさらして、
獅子はをなめてゐる。
イメージ 5
 

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