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Channel: 高村光太郎連翹忌運営委員会のブログ
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都内レポートその1 MAIA STARSHIP朗読劇「いやなんです あなたのいってしまふのが −智恵子抄より」 。

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昨日今日と、都内に用事。光太郎関連以外の雑事もいろいろあって、それぞれトンボ返りです。暇なら都内に宿泊していたのですが。

昨日は夕方に自宅兼事務所を出、目黒区の神泉に行っておりました。渋谷から京王線、もう一駅行くと、しょっちゅう行っている日本近代文学館さんのある駒場東大前ですが、神泉で下りるのは初めてでした。

暮れにこのブログでご紹介しました朗読劇「いやなんです あなたのいってしまふのが −智恵子抄より」 を拝見して参りました。

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会場は、shibuya gallery「Arc」さん。何とまぁ、古いイメージ 3マンションの一室でした。靴を脱いで上がるという。かえって都内だと、こういうのもありなんだな、と思いました。キャパも20名ほどでした。

下の画像は開演前。基本、椅子二つにキャストのお二人(光太郎・智恵子)が座って演じられる形でした。右の斜めの木枠はイーゼルを表しています。時折、お一人ががその前に立ったりもしました。

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それから、左側の壁にスクリーン。

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ここに、光太郎詩が投影されます。

智恵子歿後の「梅酒」に始まり、『智恵子抄その後』中の「あの頃」、題名ともなっている「いやなんです/あなたのいつてしまふのが――」で始まる「人に」、そして「おそれ」、「郊外の人に」、「遊びぢやない」で始まる「人に」、「金」、「淫心」など。さらに合間に光太郎役の方、智恵子役の方のセリフがいろいろと入ります。それぞれ「なるほど、こんなことを言ったかもしれない」と思わせるものでした。脚本を書かれた方、よくお調べになられていたようでした。役者の方の感情移入も見事でした。

『智恵子抄』以外からも、彫刻のヌードモデルのため雇った17歳の少女を謳った「五月の土壌」なども使い、うまいなと思いました。智恵子の嫉妬心的な描写のためです。また、徐々に浮き彫りになっていく光太郎と智恵子の微妙な齟齬なども、「餓死よりは火あぶりの方をのぞむ」という「夜の二人」に対し、智恵子のセリフとして「私はどちらも望んでいない」と言わせるなどの工夫も見られました。

「あどけない話」を経て、後半は「人生遠視」、「千鳥と遊ぶ智恵子」、「山麓の二人」、「値ひがたき智恵子」などで壊れていく智恵子、「レモン哀歌」、そして「荒涼たる帰宅」で、その死を描いて終わります。光太郎智恵子に詳しくない方でも、二人の生の歩みが理解しやすかったのではないでしょうか。

変わっているな、と思ったのは、役者さんが最後まで台本片手に演じられること。「朗読劇」と銘打っていますので、それもありかなと思いましたが、確かに下手に暗記しようとしてかえって「こうだったっけ?」的に自信なさげになったり、間違いだらけの朗読やセリフ回しになったりするより、割り切って台本片手の方がずっといいと感じました。完璧に覚え、自信を持って演じられるなら、そちらの方がいいのでしょうが。当方、趣味での音楽活動の際は暗譜はせず(出来ず、でもありますが)、楽譜を見ながら演奏することがほとんどです。それに近い考えなのかな、と思いました。

それにしても、若い役者さんお二人の、一生懸命な姿には、好感が持てました。

終演後、主宰の方とお話をさせていただきました。8年位前から構想されていたとのこと。すばらしい。今後も違った形で光太郎智恵子を取り上げるかも、的なお話もあり、ぜひそうしていただきたいものです。例によって連翹忌の営業もしておきました。

21日の日曜までの公演です。上記リンクよりお問い合わせの上、まだ空席があるようでしたら、ぜひ足をお運びください。

今日は朝から光太郎の母校・荒川区立第一日暮里小学校さんに行って参ります。ゲストティーチャーのアシスタントのそのまたアシスタントです。けっこうどさくさまぎれに強引に入れていただきました。こちらもトンボ返りです。明日はそちらをレポートいたします。


【折々のことば・光太郎】

詩とは気である。気の実である。気の実なる限り、宇宙に詩は遍満する。気の実無き限り、千万の美辞も、天来の意匠も詩を成さない。

散文「七つの芸術」中の「七 詩について」より 昭和7年(1932) 光太郎50歳

昨日も数々の光太郎詩篇に宿る「気」を感じて参りました。やはり目で読むより耳で聴く方が、それを感じます。

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